何故辞められない?ブラック企業・ブラックバイト

長時間にわたる労働や残業代の未払いなど、労働基準法違反が常態化した企業は「ブラック企業」と呼ばれ今や大きな社会問題に

この問題が浮上した当初は、主に正社員の残業などが焦点になっていたように思います。

ですが、今年に入ってから新たに、「ブラックバイト」という言葉も登場しました。ブラックバイトとは、アルバイトやパートタイマーに対し、無給労働を強要するなどの労働基準法違反です。

以下、事例を一つ紹介しましょう。

サンドイッチ工場でパートに時間外労働月139時間、残業代未払い 「ドンク」を書類送検

“パート従業員に139時間に及ぶ時間外労働をさせた上、残業代を一部しか支払わなかったとして、
亀戸労働基準監督署は26日、労働基準法違反の疑いで、国内約180店舗を展開するパン製造販売大手「ドンク」(神戸市、中土(なかつち)忠社長)と東京工場(江東区)の元工場長ら2人を東京地検に書類送検した。” – 産経ニュース

この「ブラックバイト」の実例は、氷山の一角ではないでしょうか。

私自身、学生時代にいくつかのアルバイトを経験する中で、本来の契約にはない残業の強要や、残業代の未払い、有給休暇の取得を断られるなど、「ブラックバイト」と呼ばれそうな職場を経験してきました。

なぜ無くならない?辞められない?ブラック企業問題

ブラック企業の問題を議論する時、必ずといって良いほどみられる意見が、「いやなら辞めればいい」という論です。
正社員であれば、「やめても簡単に次の仕事が見つからない」といった反論(問題提起)もありました。

ですが、雇用の流動性が高いアルバイト、パートタイムでも、ブラック労働に甘んじてしまうケースが発生している事態には、「いやなら辞めればいい」対「辞めても次が見つからない」といった議論は、本質的に当てはまらないように思えます。

一体なぜ、辞めやすく、次の職場も見つけやすいアルバイト、パートでも、ブラック労働と無縁でいられないのでしょうか?

転職リスクが、ブラック労働のコストを上回る

端的に予想すれば、「ブラック労働による負担(コスト)のほうが、転職するリスクよりも低い」という考えが、働く人々にあるのではないか?と思います。

社会システム上、雇用流動性が高いアルバイト・パートではありますが、実際の転職を考えた時、単純にそうした社会の枠組みだけではない、さまざまなハードルがあります。

それは、「条件の合う、新しい職場が見つかるか」「人間関係でうまくやっていけるか」といった属人的な問題も含むでしょう。また、幅広い社会通念として、「仕事を辞める、変えることは良くないことであり、どんな職場でも続けることが偉いのだ」という価値観の存在も、指摘して良いでしょう。

ブラック企業を無くすために、一人一人の価値観から変えていく

まずは私たち一人一人の価値観から、変えていく必要があるのではないでしょうか。

もちろん、無計画に職を転々とすることを、必ずしも良しとする必要はありません。ですが、自分のキャリアプランやライフステージに合わせて、計画的に転職を行うことは…正社員、派遣社員、アルバイトにかかわらず、必ずしも悪ではない、ということです。

仕事を辞める、仕事を変えるというと、事情やキャリアプランはさておき、「長続きしない、がまんができない、責任感のない人」と、頭から決めつけてしまう…。

そんな価値観を持った社会から脱却しなければ、一人一人の個人も、日本経済も、グローバル・スタンダードの中で生き延びるのは、苦難の道筋となりかねないでしょう。

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