一人の事業家が、仕事を独占してサービスを提供している状態だとしたら、うまく仕事をすればどんどん仕事が取れて、値段を下げる必要もなく、好きなだけ稼ぐことができます。
しかし、現実にはほとんど全てのサービスで、他の供給者が何らかの形で存在します。
そういう意味では、市場には簡単に目に見えるような「穴」は存在しません。
仮に、誰が参入しても利益が上げられるような市場があれば、あなたと同じようにその「穴」に気付き、そこに入り込もうとするでしょう。時間が経てば、「穴」は塞がります。市場は割とうまくできています。チャンスは簡単にできません。
チャンスは人がしていないことにある
他人がしていないのに、「商売として成立していないこと」。これはビジネスチャンスです。
ただし「他人がしていない」のはみんながバカだからではなく、何かしら「できない」理由がある、と考えるのが正しいです。従って、次に考えるべきなのは、どういう制約条件があって、ビジネスチャンスが見逃されているのだろうか、ということです。
たとえば、法律上の問題かもしれません。能力の問題かもしれません。
私の知り合いで、スワヒリ語に堪能な方がいらっしゃいますが、英語の通訳に比べても非常に高額な報酬で仕事を請け負っていました。これは、そもそもこの能力が希少だからです。他の人が越えられない制約条件を乗り越える力を持つこと。これが、ビジネスチャンスをものにする方法です。
これは、事業家の持つ能力をベースに、競争優位性を考えるということです。つまり、他人と違うことをする能力があるから、儲かるという考え方です。
チャンスと能力の幸運な出会い
チャンスがあっても、他の人と同じ能力しか持っていないなら、参入することはできません。しかし、同時に、チャンスを見つけてから、能力を身につけるというのではビジネスチャンスをものにする前にチャンスが消えてしまっているかもしれません。
他人と違うことをする能力を身につけるには、時間がかかります。
学習や成長の方向性は未来を向いています。未来に、都合のいいチャンスが待っているかどうかは、確実でありません。従って、ある種の賭けの感覚で、他人が志向していない方向性で能力を身につけなければいけません。
確実な結果が得られるとは限りません。
しかし、チャンスと能力の幸運な出会いを求めながらも、どのように尖るかということを考え抜くことが優れた事業家としての資質なのではないでしょうか。