ビジネスでは特に、戦略という観点からみると「競争優位」ということばがキーワードになります。
この競争優位については、経営学の黎明期から現在に至るまで、ものすごくたくさんの議論がなされていますが、端的に言えば、「他の人(企業)にできないことができる」ということに尽きるのではないかと私は考えています!
この観点からすると、ビジネスマンにとって、英語はキャリア戦略の一つということになります。
ものすごく単純化して言えば、「英語ができるから、他の人ではなく、この私が出世する」というのがキャリアにおける競争優位です。
では、英語ができるか否かというのはそれほど決定的なものなのでしょうか?
できないよりはできた方が良いが、直接的な競争力にはならない。
これは業界にもよるのでしょうが、英語ができるかどうかというのはあくまでもたくさんの数がある評価の軸のひとつでしかない、というのが私の率直な感想です。
英語が不可欠な仕事に就いていれば、英語は最低限のスキルになりますし、英語を利用しなくてもできる仕事であれば、英語が活きるタイミングが発生するかどうか定かでありません。
できないよりも、できるに越したことはないが、「結局は、手段でしかない。」…この点を履き違えてはならないのです。
英語ができても、仕事ができなければチャンスの順番が回ってこない可能性があります。
英語はあくまでも手段でしかないため、まず社会人にとって、ちゃんと仕事ができるか、価値につながる仕事ができるか、という点を見逃してはなりません。
その時に、英語力があれば、英語圏の情報等を駆使してレポートに華やかさを加えたり、ちょっとしたコミュニケーションをとるときに英語ができることで巧く回せたりという差別化を図ることができます。逆に、英語が必要不可欠な仕事に就くためには、英語はスキルアップのための必須の手段となりますが、評価の対象にはなりません。結局のところは、必要とされる英語力で、何ができるかということが問われることになります。
英語を勉強することは有意義ですが、それに必死になって、仕事をおろそかにしてしまっては元も子もありません。「そもそも、自分は何で稼いでいるのだろうか」ということを見つめ直すことは、やみくもに英語を勉強するよりも重要になります。
印象的なエピソードですが、ある大会社の部長さんを評した部下の人がこう言っていました。「うちの部長が本当にすごいと思ったときがある。外国人と折衝する時に、酷い英語なんだけれども、堂々と交渉で喋ったんだよね。本当に酷い英語だったんだけれども、伝わったんだよ」。いたずらな笑顔で話してくださったので、皮肉も含んでいます。しかし、何かしらの真実を含んでいることは間違いないと私は思ったのでした。