フリーランサーとして生活している私ですが、かつて会社勤めをしていた時期もありました。
勤務経験の中で疑問を感じることも多く、そうした問題意識が、フリーとして独立する原動力になったとも言えます。
中でも特に感じたのは、“管理職”と“出世”というシステムでした。
出世をすることは、部下を持つこと…つまり、管理職になることですよね。たとえば、営業の平社員が、優秀な成績を収めて、営業部長になる…といった形です。
この時点で、私はすでに疑問を持っています。
営業職に必要な営業スキルと、営業部長として部下を管理するマネジメント・スキルとは、まったく別のもの
優れた営業マンと、優れた営業部長とは、本当にイコールで結べるでしょうか?
ビジネスは、戦場に例えられることがあります。戦場の例えを用いるなら、営業マンは戦線で戦う「兵士」であり、営業部長は兵士を指揮する「指揮官」と言えるでしょう。兵士には戦闘力が求められますが、指揮官は統率力が求められます。これは、まったく違う能力ですよね。
営業マンの素質を持つ人が、管理職の素質を持つとは限りません。
ですが、日本の多くの企業では、「管理職に出世させる」以外に、評価や給与を上げるシステムが無いのです。
結果として、管理職の素質を持たない人、マネジメントに向いていない人も、管理職ポストに置かれることになる
これでは本人にとっても、部下にとっても、会社全体にとっても、デメリットしかありません。
向いていない人が、向いていないポストに置かれるため、ビジネスの効率が大幅に下がってしまうからです。組織のパフォーマンス低下とも言えるでしょう。
そして、この「パフォーマンス低下」が、今、日本経済全体の問題となりつつあります。
資料を引用します。内閣府経済社会総合研究所の山田亮氏が、第40回ESRI経済政策フォーラムのパネルディスカッションにて提言したものです。
“(日本と欧州企業とでは)、かけている時間が少ない割には、アウトプットの内容は日本に比べて遜色がないというのが大方の評価。”
“仕事の仕方・させ方における「個人」と「組織」の関係の違い
・仕事のやり方についての個人裁量が大きい。
・日本ならチームでやることを一人で仕上げることが多い。
・自分のリズムで仕事ができる。”
「ポスト」や「肩書」にとらわれがちな日本企業と、「個人の能力・適正」を重視する欧州企業との差が、明確に指摘されています。
グローバル経済が当たり前となった今、日本企業型の組織、人員評価では、衰退する経済に飲み込まれる一方です。
現状の日本では、「個人」で仕事をする個人事業主やフリーランサー、あるいは少人数の中小企業こそが、欧州企業型に近いビジネス・スタイルと言えるでしょう。「個人能力重視」だからです。
こうして見ると、大企業よりも個人事業や中小企業のほうが、グローバル経済時代に強いとも言えそうですね。