「軽自動車が売れなくなりつつある」という指摘が、経済紙面をにぎわせています。
ビジネスジャーナル紙は、『スポーツカーや2ドア、なぜ売れなくなった?軽人気に死角 飽き飽き感蔓延、値崩れ寸前…』を配信。
自動車税の増税や、軽自動車の市場の成熟、中古車の流通量の増大などの原因を指摘し、軽自動車の売れ行きに警鐘を鳴らしました。
日本のものづくり産業の“柱”とも言える自動車業界。ここに不安要因が生まれることは、経済全体にも悪影響を与えかねません。
ですが、「車が売れなくなった」と言われはじめたのは、今からもう何年も前の話。
長引く“自動車不況”の原因は、本当に増税や、市場の成熟だけなのでしょうか?
“若者の自動車離れ”に危機感
自動車業界の根底にある危機感は、「若者の自動車離れ」ではないでしょうか?
トヨタ自動車株式会社は2010年7月に、「免許保有人口総数は増加しているものの、世帯保有台数が少ない60代以上が増加。一方、20代の若者世代は免許保有人口が減少」と、経済産業省への報告書にて言及しています。
長い目で見れば、自動車…とくに新車の購入を支えてきたのは、20代・30代の若者世代だったとも言えます。
社会人になる、結婚する、子供が生まれる…といった人生の節目節目で、「車を持とうか」となるわけですね。
ところが、現代の若者は、そうした節目においても「免許を取ったり、車を買ったりしない人」が増えていると考えられます。
今こそ“フォードの経営思想”を
「若者の自動車離れ」に次いで、「軽自動車も売れない」と言われる今、自動車業界は、もう一度フォードの経営思想を見直す必要があるのではないかと思います。
自動車産業を経済のメインストリームに押し上げたフォード自動車。さまざまな経営手法の確立したことで、経営学の教科書にも必ず登場します。
その有名な経営思想のひとつに、こんなものがあります。
フォードの自動車工場で働く若者たちに、経営陣はこんなメッセージを発信しています。
「わが社で一生懸命働いてくれれば、わが社のもっとも安いランクの車ぐらいなら、所持できるだけの給料は支払おう」
当時の若者にとって、車を持つことなど、夢のまた夢。
その夢を叶えることを約束し、事実、フォード社経営陣はそのようにしました。
自社の従業員が、自社から受け取った給料で、自社の製品を買う…そんなサイクルが生まれ、人件費がシェア拡大に貢献する結果を生み出します。
一方、今の日本の自動車業界はどうでしょうか?
大手自動車メーカーの下請け・孫請け企業で働く若者たちは、“最安値ランク”の車を持てるだけの給料を得ているのか…。
そう考えると、疑問を持たずにはいられません。