「学校を卒業したら、すぐに就職しなければいけない」
「新卒就職で失敗したら、“人生転落”」
そんな日本の就職・採用文化に対する疑問は、毎年のように叫ばれ続けています。アベノミクスによる景気回復、雇用の増加が声高に叫ばれる2015年も、やはりこの“就活問題”に対する異論は噴出しています。
その中でも今回は、「採用方法のあり方・方法論」に目を向けて、社会の問題意識を浮き彫りにしてみましょう。
就活に必要なスキルは“演技力”だった?
「就職活動は嘘つき大会だ」
この指摘は、就職活動にいそしむ学生の皆さんや、就活を経験してきた多くの社会人の皆さんに、思い当たる節もあると思います。
“就活マニュアル”に掛かれている、理想的・模範的な新卒者を、いかに演じきるか…という観点に、学生たちは陥りがちです。そして同時に企業の採用担当者も、応募してきた学生が、「どれだけマニュアル通りに演じきれているか」を、選考基準の一つにしてしまってはいないでしょうか?
どっちもどっち?応募者も採用担当者も問題アリ
「はい、私は大学で○○サークルを設立し、アルバイトではリーダーを務めました。また、学外でのボランティア活動にも積極的に参加し…」
よくありがちな自己PRの内容です。もちろん、大半は嘘でしょう。採用担当者は、すぐに見抜きます。にもかかわらず、こうした“嘘の自己PR”を繰り返す学生の多さに、うんざりしている採用担当者も、少なくないでしょう。
一方で、面接で出された“とんちんかんな問題”が、twitterなどのSNSで、ひそかに嘲笑の的とされるケースも後を絶ちません。
googleの採用試験で、「冷蔵庫にゾウを入れる方法を答えなさい」といった奇抜な問題が出された…等、出典不明の噂話が独り歩きした結果、個性的な人材を求める採用担当者が“こじらせて”しまう場合もあります。
第三者の視点から見れば、まさに「どっちもどっち」と言いたくなる状況です。
そもそも、短時間の面接やエントリー・シートで、雇用する人材を見極めること自体に、無理があるのではないかと思います
面接自体は、諸外国でも取り入れられているスタンダードな採用方法です。
ですが、諸外国と日本とでは、採用の“重さ”が違います。
日本は国際社会の中でも、特に正社員の雇用規制が厳しい国家です。正社員採用した人材は、よほどのことがなければ解雇できず、またその解雇コストも高くなります。
諸外国よりも“重い”判断を、諸外国と同様の手法で行うからこそ、無理が生じているのではないでしょうか。
この状況を是正するためには、「雇用規制を緩和し、人材の流動性を高めることが必要」との指摘もあります
また、批判の的となることの多い非正規雇用ですが、「まずは非正規で採用し、長い目で見ながら正社員へ登用していく」という採用手法も、日本の雇用制度の現状をかんがみれば、現実に即していると言えるでしょう。
“嘘つき大会”に終始しがちな採用試験に終止符を打ち、“採用の在り方”か“社会制度”、どちらかを変えなければならない…。
そうした時代が、すでに始まっているのではないでしょうか?