今さら人に聞けない!?知っておきたい配偶者控除の基礎知識

税金や保険料が減免される、配偶者控除。言葉そのものや、「年収103万円以下だと受けられる?」といった大雑把なイメージはあっても、詳細は知らない方も多いと思います。

今回は、配偶者控除の基礎知識をまとめました。

「○○円以下で控除」といった単純な解説に注意!

税金の仕組みに関しては、根拠を明確に示さない、あるいは法令や制度設計を充分に理解しないまま、「○○万円以下だと税金が無くなる」といった説明をするサイトもあります。
こうした曖昧な説明を鵜呑みにした場合、税のトラブルも懸念されます。

当サイトでは、法令や行政機関の発行する一次資料を元に、正確な解説を心がけていきます。ですが実際は、個々のケースによって異なる部分もあります。

近年は特に、高齢者に対する優遇や、被災地復興のための特別法なども整備されており、一言に「○○万円で控除」とは言い切れません。
また、税と社会保障の一体改革が進められている最中であり、次々と法律が変わっている時期でもあります。(2014年11月現在)

そこで当記事では、以下の7つの仮定を元に解説していきます。

1.扶養者・配偶者を妻、被扶養者を夫とします。
2.この夫婦は婚姻届を提出し、入籍しているものとします。
3.夫が家計の主として給与収入を得ており、妻がパートタイム労働でそれを支えている家庭を想定します。
4.不動産収入、株式配当などは得ていないものとします。
5.両者ともに成人であり高齢者ではなく、また、育児・介護を行っていないものとします。
6.東日本大震災、および福島原発事故に被災していないものとします。
7.法令や制度などは、平成26年4月1日の段階で施行されている制度に則って解説します。

この条件に当てはまらない方の場合、仕組みが異なるのでご注意下さい。

配偶者控除の種類は実は複数あった!

この話をわかりにくくしている原因は、“「配偶者控除」が一つではない”ことです。

・所得税の配偶者控除 … 国税庁
・住民税の配偶者控除 … 居住地域の各自治体
・国民年金・健康保険の配偶者控除 … 社会保険事務所/健康保険組合など

一言に「配偶者控除」といっても、『何が控除されるのか?』によって、仕組みがまったく異なります。仕組みを運用している公的機関も違えば、それぞれのルールや法律も違うためです。

配偶者控除を考えるときは、『何の控除なのか』『どこの仕組みなのか』ということを区別しましょう。

【その1】所得税の配偶者控除

所得税に掛けられる配偶者控除です。この項目では、国税庁のホームページを頼りに解説していきます。

所得税の配偶者控除は、以下の条件で適用されます。

“控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。

(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。

(2) 納税者と生計を一にしていること。

(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。”

パートタイムで働く方が気にされる「103万円」の、所得税の配偶者控除のボーダーラインです。これ以上の金額になると、所得税の支払いが発生します。

【重要!】ですが、103万円を超えた場合でも、141万円以下であればメリットが発生します。「配偶者特別控除」により、妻の収入が103万円を越えた場合も、141万円以下であれば、夫の所得税が減額される仕組みです。
控除額は段階的に決まっていくため、具体的な金額は、下記の参考サイトを参照して下さい。

参考:

『国税庁 配偶者控除』

『国税庁 配偶者特別控除』

【その2】住民税の配偶者控除

住民税は、自治体に収める税金です。各自治体で決められた「均等割」と、前年の所得よって決まる「所得割」、貯蓄の利子にかかる「利子割」などがあります。

その他、株式配当や譲渡に対する割り当てもありますが、今回の夫婦の例では当てはまらないため、解説は省略していきます。

住民税は地方税法で基本方針が定められていますが、細かい規定は自治体ごとに異なるため、このコラムでは、東京都23区内の例を参考にしていきます。

参考:『東京都主税局 配偶者控除・配偶者特別控除』

参考サイトの表を確認すると、次のようにまとめられます。

・配偶者の収入が103万円以下の場合は、33万円分の配偶者控除が適用される
・配偶者(妻)の収入が104万円以上141万円以下の場合は、配偶者特別控除として、夫の住民税に33万円分の控除が適用される

ほとんど所得税と同じボーダーラインですね。

『妻の収入103万円以下の場合は、所得税も住民税も控除が適用される』
『妻の収入が103万円を越えても、141万円以下なら、夫の所得税・住民税にメリットがある』

 

このように理解しておきましょう。

【その3】国民年金・健康保険の配偶者控除

税金の配偶者控除と、国民年金・健康保険の配偶者控除(扶養控除)とでは、仕組みや基準が異なります。この項目では、日本年金機構の資料を元に解説していきます。

健康保険の場合、条件は以下のようになっています。

“健康保険では年間収入が130万円未満であって、かつ、被保険者の年間収入の半分未満であれば、原則として被扶養者に該当します。”

年収130万円を扶養のボーダーラインと考えましょう。これを越えた場合は、自分で年金や健康保険を支払う必要があります。
一方、『130万円未満であって、かつ、被保険者の年収の半分未満』という条件を満たしていれば扶養家族となるため、夫の保険に加入することができます。

年金も夫の『第3号被保険者』となるため、妻が自分で支払う必要はなくなります。

参考:『日本年金機構』

『○○万円の壁』でまとめると…

最後に、配偶者控除の話でよく登場する、『○○万円の壁』でまとめてみましょう。

・103万円の壁 … 所得税・住民税の減免
・130万円の壁 … 国民年金・健康保険で扶養家族と認められる
・141万円の壁 … 夫の所得税・住民税の減額メリットが発生する

繰り返しになりますが、この『○○万円の壁』は、冒頭で示した“7つの仮定”に当てはまる方でなければ合致しません。

税金の仕組みは、携帯電話の料金プランよりも複雑です。
自分と家族が利用できる具体的な控除については、税務署や役所などに問い合わせをした方が早いかもしれません。

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