短期的な収支をしくじれば、事業は沈む
目先の問題として常に頭を悩ませるのが直近の売り上げや利益です。端的に言えば、事業がちゃんとキャッシュを生み出せているかということです。
商売の基本的な原則は、1のお金を投資した分に対して、1以上の見返りを上げることです。
このサイクルがうまく回っていなければ、事業は成立しません。事業の基本は、目の前の仕事からいかに効率的にキャッシュを生み出すかということにあります。
能力や事業の成長がなければ、事業は沈む
もうひとつ重要なことは、商売の種を仕込む、ということです。世の中は常に変化します。今日稼げていることは明日はまあ稼げるでしょうが、一年後、三年後、五年後はどうでしょう。おそらく、まったく同じサービスを提供し続けるだけ、というのでは事業の存続は難しくなってくるでしょう。
短期的にキャッシュを生み出すことに成功していても、それが続くかどうかはまた別の問題です。
事業主は、今日のパンに困らない、だけではなく、三年後、五年後にも食えている状況を作りだす必要があります。そのためには、今日よりも明日、そして、一年後、三年後といった未来に向けて、新しいことができる力をつけていく、もっといい仕事ができる力をつけていく、今まで手をつけていなかった分野もできるようになっていく、といった工夫が要求されます。つまりは、能力や事業の成長です。
短期と長期のバランス
短期的な取り組みは最低限必要です。仮にプロスポーツのチームを運営している立場だとしたら、一試合一試合勝つことをまずは目標にしなければいけません。しかし、目の前の勝利のみに固執して、ベテラン選手ばかりを起用して、若い力を育てていなければ、戦力が流出したり、加齢によってベテラン選手が劣化した時に、チームの力が落ちてしまうのを避けることができなくなります。勝利と同時に若手戦力の養成が必要となるでしょう。
商売においても日銭を稼ぐ毎日の中に、直接稼ぎにはならなくても将来の稼ぎのための「育成」が必要になってきます。これは、明確に計画しなければ、日々の忙しさに埋没して忘れてしまいがちになります。「そりゃあ、新しいことをしなければいけないことは分かってるけれども、毎日忙しいから」と言い訳をしたくなるところですが、言い訳を続けているうちに毎日の仕事もうまく回らなければ、事業は終わってしまうのです。
短期と長期のバランスをどのように取っていくか、それをどう計画していくかということを事業家は要求されるのです。