就活失敗で自殺?「デッド・オア・ニート」の若者たち

今、20代の若者たちの「就活自殺」が社会問題となっています。

就職活動の失敗…なかなか内定が取れない、就職先が決まらない…こうした動機で自殺してしまう若者が後を絶ちません。

『内閣府:自殺の概要資料』等によると、2012年度の就職失敗による自殺者数は149人。

日本の年間自殺者数は約3万人ですから、さほど多くないようにも感じます。ですが、年次推移を見ると年々増加傾向にあり、2007年度から比較して、5年間で2.5倍にも膨れ上がっていることが指摘されています。

”5年前(平成19年:60人)と比べて、昨年は2.5倍にまで急増しています。ただ、これはあくまでも氷山の一角に過ぎません。自殺未遂者は、実際に亡くなる人の10倍はいると言われていますから、少なくとも毎年1000人以上の20代が、「就職失敗」を理由に、自殺を試みている計算になるのです。”
-視点・論点 「“就活自殺”の背景に迫る」│解説委員室:NHK

なぜ若者たちは、就職失敗を理由に、これほどまで自殺を試みてしまうのでしょうか。一体何が追い詰めているのか…。「就活自殺問題」の闇に、スポットライトを当てていきます。

就職活動で絶望する若者たち

若者たちは、どのような心境で就職活動に臨んでいるのでしょうか。

大人として社会へ進出していく希望や夢、ポシティブな将来像を描く人ばかりではありません。

自殺対策支援NPO「ライフリンク」が2013年3月に行った、就職活動生121人を対象とした聞き取り調査があります。

この調査結果を通して、就活に挑む若者たちの“負の感情”も浮き彫りになりました。

“「就職活動は~だ」という形で表現してもらう項目でも、「自分の知らなかった大人のスゴさを知る時」「楽しむ場」といった楽観的な声がある反面、「クソ社会を知る」「自己洗脳で乗り切るもの」「狂気」といった声も。”
 -就職活動生の1割「本気で死にたい」 若者の「就活自殺」なぜ急増:J-CASTニュース

こうした就職活動の負の感情を、赤裸々に綴った匿名エントリーも、ネットで話題を呼んでいます。

『就活で自殺するぐらいなら就活する前に自殺しろ』というタイトルで『はてなブックマーク』に投稿された匿名記事は、次のようにコメントしています。

“就活で自殺するぐらいなら就活する前に自殺しろ。そうすれば就活なんかしなくてもいい。”
“新卒制度は間違ってるし、新卒入社しなくてもいろんな選択肢があるってものの見事に洗脳されてるオ・マ・エ。おめーはいいから就職しとけ。リクナビもマイナビも気にいらんだろう。だったらハロワでも行け。絶望するのが遅すぎただけだ。”
 -就活で自殺するぐらいなら就活する前に自殺しろ

この過激なエントリに対し、賛否両論の議論が噴出。「失敗する人がいるのは当たり前」とする向きもあれば、就職や社会人になることを「キレイな嘘」で歪めているからこそ、現実に直面したときにショックを受けるのだと指摘する声もあります。

今の20代は、失われた20年の“申し子”たち

「就職に失敗したぐらいで、どうして自殺を…」

社会人ともなると、そんな疑問も浮かんでしまいます。「世の中に出れば、もっとつらいことは、たくさんあるんだよ」と言いたくもなります。ですが、就職失敗がそのまま“人生おしまい”につながってしまう、今の若者たちの心理も考えてみたいと思います。

今の20代前半が生まれたのは、バブル経済が崩壊した後です。

物心ついた時には、日本の終身雇用神話も、経済発展も、全てが崩壊の様相を呈していました。

リストラ、倒産、不良債権…。そうした出来事を、ニュース報道や身近な大人の体験談として、見聞きしながら育ってきた世代です。

ある意味では「失われた20年の“申し子”」とも言えるでしょう。

そんな彼らの価値観では、就職の失敗は「生きていけない、人生の終わり」とも言えます。
なぜなら、「働き先や安定収入を失った」という理由で、実際に死んでしまった大人たちを見て、育ってきたからです。

ニートになってでも生きながらえ、再チャレンジに賭ける…。そうした可能性を信じることは、今の20代には、難しいのかもしれません。20代だけでなく、何歳になっても、いつでも再チャレンジができる社会を作ることが、これからの私たちの役割なのかもしれませんね。

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